「陸前高田市のじいちゃんばあちゃんが持っているものがなくなってしまってはもったいない」

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経験がものをいう農業への知識や技術、またその生産物をどう売ったらいいのかまで、これまで陸前高田市の農業に携わってきた生産者と、若い世代の人たちが交流を持つことを目指している産直があります。

その産直が、東日本大震災後の2011年5月22日に開業した「産直はまなす」。現在、事務局を務める戸羽初枝さんは立ち上げから携わってきました。
「津波の被害にあった道の駅 タピック内にあった『農事組合法人採れたてランド高田松原』の生産者たちが中心となって、産直はまなすを立ち上げました。私が加わったのはそのメンバーであった母から声をかけられたことがきっかけです。プレハブに電気、水道を通して、お店に必要な備品を用意して。初めてのことをさぐりさぐり、お店を開店させるための準備作業に当たっていました」

 

戸羽さんは陸前高田市米崎町の出身。両親は農業に携わっていました

ひとりひとりの意見が反映されることを意識して、運営メンバーは12人で組織。開店前には店内の準備作業に加えて、「どんな産直にしていくか」の議論を重ねていました。

話し合いの中で出てきたキーワードは「産直はスーパーマーケットではない」ということ。

「お客様が求めるものを準備することが一番の目的になると、食料品から日用品まで幅広く商品を揃えようとして、モデルがスーパーマーケットになってしまう。はまなすは生産者が運営する産直。スーパーマーケットのようにするのではなくて、まずは生産者の生活レベルを上げるために、生産者の利益を向上させること。もうひとつは陸前高田市の復興に邁進すること。その目的のために、お客様にサービスする、お客様のニーズに応える。ということを意識していこうと話し合いました。小さい産直だけど目的とか志はしっかりと持っているんですよ」

産直はまなすでは、野菜や果物、花のほか、野菜苗や花苗などを販売。りんご祭りや盆市など毎月、季節に合わせたイベントも開催しています。取り扱っている農作物はすべて地元の農家の方が生産しているものばかり。お昼には初枝さん手作りの日替わりランチを提供しています。

イベント中に行われた「餅まき」の様子。イベント時には大勢の参加者で賑わいます

「農業は経験値の影響が大きいので、80代くらいの生産者の方がつくる作物が一番よく売れるんです。もちろん栽培の仕方が上手だということもありますが、野菜の売り方、商売することが上手だということもありますね。農業の経験が長いから、いつ何を売ったらいいかとか誰にどう売るのかとかがよくわかっている。陸前高田市でもよく若い経営者の方がきて、カタカナの経済用語を言うけれど、そういった『マーケティング』のようなことをここのじいちゃんばあちゃんたちは実践できていると思うんです」

 

天候に左右されることも多く、作物ごとに栽培方法も異なるため、なかなか農業の職についたばかりの生産者では、同時に多くの種類の野菜を育てることは簡単ではありません。

それでも、長い間農業をしてきた生産者の方は、同時に30〜40品目の作物を育てながら「今は、何を、どう管理する時期か」ということを考えて、作業に当たることができます。

そういった陸前高田市のじいちゃんばあちゃんたちがこれまで経験して、身につけてきたことが失われてしまうことを初枝さんは「もったいない」と語ります。

 

「今は年齢を理由に、運営から手を引いていく生産者も増えてきています。だからこそ新たに農業に就こうとする人を増やしたり、若手の生産者を応援したりする活動を続けていきたいなと思って動いています。若い人が出入りできるような空間をつくって、本当に足を運んでくれるようになったら嬉しいです」。

 

じいちゃんばあちゃん、生産者の人たちと若い世代の人たちが、交流をして、技術や知識を継承していく。産直はまなすがその拠点となることを初枝さんは目指しています。

実際に産直はまなすで働くスタッフの中には、若手の従業員も。

 

今年で23歳になる佐々木裕郷さんは、移住して1年。産直はまなすで働いて3ヶ月が経ちました。

これまで働きながら、どんなことを感じているのでしょうか。

佐々木さんは東京都出身。産直はまなすではアルバイトとして関わっている

「ここで働いていると、お金だけじゃない何かを手に入れることができると思っています。まずひとつは地域に溶け込めるということ。産直はまなすには農家さんも漁師さんもくるし、商品を求めに地域中の人が訪れてくれます。色んな人と出会いながら、毎回シフトに入るごとに陸前高田市の知識が3つくらい増えていく感じがありますね」

 

佐々木さんは、大学を休学して、陸前高田市へ。ちょうど仕事をしていなかった時期に、車を持たず、自転車で市内を移動していたことから、初枝さんに「車を使うこともできるから」と働くことを誘われ、「拾われました」と笑いながら話します。

「初枝さんはお母さん感が強い人です。自由に好きなことをやらせてもらいながら、応援してもらっている感覚があります。もちろん強く言われることもあるけど、とりあえずなんでもやってみろっていってくれて、それを本当にやらせてくれるんです」。

初枝さんのもとで働きながら、地元の生産者の方々と交流して。東京都出身の佐々木さんにとって、陸前高田市の生産者の方々の働き方は「憧れの働き方」だと話します。

 

「陸前高田市の人たちの多く、特に一次産業に携わっている人たちは、仕事と趣味みたいな切り分けがなくて、暮らしの中の生業として仕事があるような印象を受けています。暮らしの中でやっていることが稼ぎになるって、僕にしてはすごい新鮮な感覚で。まさかそういう学びを産直で働いていて、得ることができるとは思っていなかった。そうした新鮮な感覚とおもしろさを持って働くことができていますね」。

産直内では農作物だけでなく、地域住民の方がつくった手芸品も

 

今度はもう一度、初枝さんのお話に戻って。これから募集する人に、どんな役割が求められるのかをお聞きしました。

 

「まずは、じいちゃんばあちゃんたちと話ができること。ただレジを打っていたらいいのではなくて、取り扱っている野菜や花のことを聞かれることもあるので、少しずつ知識を得ながら、じいちゃんばあちゃんたちに説明ができるように。そうしてじいちゃんばあちゃんたちと話をしていると、勉強になることがたくさんあると思います。私の野菜や花の知識も、若い人に全部伝えていきたい。生産者の方たちがすでに経験されてきたことをいただいておいて、あとで必要な時に自分が使うということもできると思う。ダブルワークも可能だし、研修にもどんどん行ってほしい。いつかよそにいった時に役立つようなことを、ここで働きながら身につけてほしいです」。

 

生産者さんとの関わりを通じて、学びを得ながら、好きなことに取り組める環境が産直はまなすにはあります。

 

農業に興味がなくても、「陸前高田市で暮らしてみたい、働いてみたい」と考えている方はぜひ産直はまなすに訪れて、初枝さんとお話してみてください。

初枝さんとお話をして「自由にやりたいことをやらせてくれて、応援してもらっている」雰囲気を受け取ると、「自分のやりたいこと」がよりはっきりと浮かび上がってくるかもしれません。

 

(Text : 宮本拓海(COKAGESTUDIO))

コメント

高田暮舎 三橋さん

もしわたしが 産直はまなす で働くなら…

産直はまなすは沢山の生産者さんが集まる場所なので、生産者さんが「こんな風に作って、こんな思いをもってやっている」ということを発信したいです。あとは、いろいろなものを売っている場所なので、自分で作ったものを売ってみたいのと、生産者さんたちが「本当はやりたいけれど、手がついていないこと」を代わりにやる存在にもなれたらな、と思います。

詳細

求人募集要項
企業名・団体名 産直はまなす陸前高田
募集職種 (1)レジ・接客 (2)準組合員(農産物販売者)
雇用形態 パート・アルバイト (試用期間 1ヶ月)
給与

要相談

福利厚生

・保険( 雇用保険 )
・時短勤務( 子育て・介護 )

仕事内容

レジ、接客、組合員への連絡、市場への注文、イベントッスタッフ(はまなすのイベント)、電話、連絡、
掃除、農産物・花・苗など商品の管理。

農業初心者でも畑や農作業を学びたいという方、生産者になりたい方、歓迎。

勤務地 岩手県陸前高田市米崎町字川向146-1
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勤務時間 8:30~17:30
休日・休暇 週休2日
応募資格・選考基準

【必要なスキルと経験】
笑顔で接客ができること
高齢の組合員とのコミュニケーションを楽しめること

【歓迎するスキルと経験 】

求める人物像

農産物直売所のため、たくさんの生産者が、たくさんの種類の生産物を季節ごとに出荷するため、覚えることがたくさんあります。
商品の名前、生産者の名前、苗の種類などなど、それを苦に思わずに、やってみたいと思う方。また、生産者になりたいという方も募集しております!初めての方でもお教えしますで農業初心者歓迎します。

募集期間 なし
採用予定人数 1名
応募方法・選考プロセス

「産直はまなす」(0192-47-4270)へ直接お問い合わせください。
(「高田暮らしを見た」とお伝えください。)

その他

・ダブルワーク可
・まかない有り

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