空き家のカメラ

2024.07.19

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こんにちは!高田暮舎の木津谷です。

あっという間に移住して1年と半年。高田の豊かな自然をじっくりと感じながら過ごしました。毎日違う姿を見せる、海、山、川、田んぼの風景。そして、自然がくれるたくさんの美味しい野菜、お魚、果物。青森の厳しい気候で生まれ育った私からしたら、東北の気候と、豊かな恵みが全て揃った天国のような場所だなあと思って暮らしています。

そして、この広大な自然と共存するには、自分で手入れも必要だということもひしひしと感じています。今の時期はとにかく草刈りが大変ですよね。


(息を呑むほど美しい風景が、日常の中にパッと現れる瞬間があることに幸せを感じます。)

これまで、少しずつお仕事を覚えながら、高田暮舎の「お家の未来相談窓口」の担当として、この土地で、いろんなお家のお悩みを聞いてきました。

震災から10年以上経って、高齢化は進み、空き家は増える。家を抱えている人も歳を重ね、体は動かなくなる。

相談してくださる方たちは、初めて会う私に、いろんな話を聞かせてくれます。震災の痛みをぽつりぽつりと語ってくれる人や、壮大なお家の記憶を話してくれる人、家族や自分の人生のことを教えてくれる人。

みなさん、悩みながらもお家のことに向き合おうと一歩を踏み出した人たちなのですよね。

消えてゆくもの、残っているもの、忘れられないこと。時にはリアルでグロテスクだったり、一言では片づけられない複雑な事情があったりします。

そこに目を背けずに、相談してくれた方と一緒に向き合っていくというのが、今の私のやるべきことなのかなぁと思っています。


(古物を買う時に思い出を話してくれる方もいて、楽しいです。)

いろいろなお悩みなのかで一番多かった相談は、モノの引き取り。

たくさんのお問い合わせがあり、いろんなお家から素敵なものを引き取らせてもらっています。日々、ものを軽トラックに積んで持ってきては、一つ一つ洗って綺麗に再生する作業。もちろん、少人数で動いている私たちが引き取れるものには限りがあって、救えないものも多いのですが…。何度も何度も悔しい思いをしながらも、試行錯誤しながら、どうしたら使えるかを考えています。


(たくさんのものの中から選ばせていただいて引き取るのですが、あっという間に倉庫がいっぱいになります。)

最近は、空き家から出てきたカメラを、動作確認も兼ねてフィルムを装填して写真を撮っています。時には、カメラ自体にマジックで名前が書かれているものや、撮りかけのフィルムが中に入ったまま残っているものも。

古いモノなので、現像するまで取れているかどうかわからないままシャッターを切るのですが、その時間も楽しみながら、ファインダーを覗いています。

色々なフィルムカメラを使っていると、技術の進化を感じたりして、それも楽しいんです。重いカメラ、軽いカメラ。ほぼデジカメような機能を持ったフィルムカメラから、フラッシュがないカメラ、ピントが自動で合わないカメラ、とか。

機能が少ないと、その分ファインダーを覗く時間が増えて、どんな写真を撮ったかを覚えていることにも気づきました。


(実際にフィルムカメラで撮った写真。今のスマホの写真では生まれない、ピンボケや感光も味になりますね。)

空き家から出てきたカメラで写真を撮っているとき、自分の時間と誰かの時間が重なる感覚があります。自分がファインダーを覗いている時、このカメラを持っていた人も、同じくファインダーを覗いていたのだ、と。このカメラをリアルタイムで使っていた時の喜びや驚きを感じます。

そこに写っていたのは、例えば、旅行の思い出や、震災前の高田の風景なのでしょうか。または子供の笑顔とか、冠婚葬祭の記録写真とか、何かの記念写真とか?それとも、何気ない家のお庭の写真だったりするのかなぁ。

そういうことを考えながら写真を撮る感覚が面白いなぁと。ファインダーを覗くたびに、タイムスリップして、いろんな時代に自分がいるような気持ちになるんです。

こんな感じの小さな気づきがあるのが、古物を手にとることの楽しさだなあと思います。みなさんも、些細なことでも感じることがあったら、ぜひ私に教えてください!

 

【プロフィール】
木津谷亜美
1999年生まれ/青森県西津軽出身/母国語は津軽弁/2022年夏季インターンを経て、2023年4月に移住。高田暮舎では、おうちの未来相談窓口を担当/古着が好きで、空き家から出てきた服を着ることにハマっています。

執筆者プロフィール

柴崎 航

1995/5/26 東京都江戸川区出身 移住コンシェルジュ アウトドア・インドアどっちも好きで困ってます。これから陸前高田を知って皆さんに伝えていきます。