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※こちらの求人は募集終了しました。
文化四年創業。およそ200年の間、こだわりの商品を作り続ける会社があります。
株式会社八木澤商店は、陸前高田市気仙町で生まれました。
岩手県産の丸大豆を使用したしょうゆ、それを加工したつゆやタレの生産をはじめ、味噌やしょうゆを使った加工品の生産・販売、飲食店の運営をしています。
今回募集するのは、八木澤商店が営む「やぎさわカフェ アバッセ店」で働くスタッフ。
まだ新しいこのお店を、一緒に育てていく人を探しています。
やぎさわカフェ アバッセ店があるのは、複合商業施設「アバッセたかた」内の一角。2017年、陸前高田の中心地に開設しました。
食品や日用品、お土産などが揃うこの場所には、陸前高田の生活の中心として多くの住民が訪れます。
まずお話を聞いたのは、八木澤商店 9代目社長の河野通洋さん。
八木澤商店の歴史と、河野さん自身について伺いました。
「八木澤商店は、もともと酒造業が始まりです。私の時代にはすでにお酒は作っていなくて、しょうゆと味噌と漬物、あとはしょうゆの加工品のドレッシングやタレなどを生業としていました」
河野さんは、陸前高田市気仙町出身。一度は地元を離れ、岩手県内のホテルに務めたのち、八木澤商店の後継として町へ戻りました。
「父と母が経営陣だったのですが、『食というのは人間が生きていくうえで最も重要なことなので、そこに化学調味料や食品添加物、着色料といったものを使わない商品をつくっていこう』と言っていて。そしてなるべく地元のいいものを掘り起こして、付加価値をつけた加工品を作っていきたいという考え方で会社を方向付けていました。私も、八木澤商店はその方向がいいなという風に思っていて。それを踏襲することにしました」
河野さんが社長に就任したのは、東日本大震災が起きてすぐのこと。
津波の被害を受けて全壊となった工場は、翌年に一ノ関市内の小学校跡地に再建。「陸前高田になんとか戻ってきたい」という思いで、市内の矢作町にも本社を設立しました。
そこからやぎさわカフェの初店舗「一本松店」がオープンしたのは、2012年秋。
「本社は陸前高田にあるけれど、市内での生産機能は失ってしまった。でも、八木澤商店が陸前高田で今後なにをやっていくかというのを、ちょっとずつ表現していきたかったんです」
その後、陸前高田市の中心市街地の復興が進む中で建設されたのが大型複合商業施設「アバッセ陸前高田」。この場所にできたのが、「やぎさわカフェ アバッセ店」です。
「アバッセができる前は、この辺は本当に何もなかったんです。高校生がデートできるような場所もなかった。でもここなら、併設の図書館の中にドリンクを持ち込むこともできるし、地元の人も来やすい。『あ、そりゃあここでやってみようかな』と思って、お店を始めることにしました」
今では図書館を利用しに来た人や、仕事の打ち合わせで利用する人など、小さな子供から大人まで、訪れた人が思い思いに過ごす様子が伺えます。
「例えば東京に行くと、ワッフルって1000円以上するでしょう。でも、ここへきて『今日は奮発だ』と言って1000円札を出して、600円のワッフルを食べる。そういうことが地元でもできるようになったら、それはちょっと豊かなことだと思うんです。だから、品質にはすごくこだわっていくけれど、あんまり高くしていくのではなくて、子どもでも大人でも気軽に来てほっとできるような場所にしていきたい。
陸前高田って小さい町ですけど、そのなかにちょっと選択肢があって、『今日はこれでいこう』とか『こういう色で行こう』とか、コーディネートできるようにしていきたいんですよね」
やぎさわカフェ アバッセ店で店長を務めているのは、村上明美さん。
もともと八木澤商店の社員として務めていた村上さんは、アバッセ店がオープンした半年後からカフェに立っています。
「実家が矢作町の本社の近くだったんです。働き始めたのは平成15年、最初に食品部の工場で古漬けの部署に入り、そのあとは営業を担当していました。」
村上さんが店長としてやぎさわカフェで働いて1年。仕事の内容は材料の発注から調理や接客、スタッフとのコミュニケーションまで。幅広く担当しているからこそ、お店の仲間に助けられることもあるそう。
「正直、上手くできないこともあるんです、例えば、私はパソコンがとても苦手で…。本当はどうにかしたいんですが、若いスタッフに甘えているところもありますね」
そんな中でお話してくれたのは、「空気をつくる」ということ。
お店に立つ存在として、店長として、日々心がけていることがあると言います。
「来ていただく人に、居心地のよさとか、そういう空気を感じてもらうにはどうすればいいかということを考えています。コミュニケーションの大切さですね。私は格式ばった会話もあまり好きではないのですが、一方で失礼がないように見極めないととも思いながら…」
「と言っても、まだ難しいんですけど…」と続ける村上さん。お客さんとの関わりのなかで、嬉しかったこともお話してくださいました。
「開店当初からワッフルを出しているのですが、『前回食べたワッフルが美味しかったから、また来ました』といって、盛岡から来てくださった方がいて。覚えていてくださったということが、とても嬉しかったですね」
村上さんとお話していると、店長でありながら、とても謙虚に、丁寧に、相手やお店について考えていることが伝わってきます。
村上さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。
「お客さんと接することが多い仕事なので、人と話すことやコミュニケーションをとることが楽しいなあと感じられる人がいいと思います。あとは、元気であれば。健康が一番だと思いますから」
続いてもう一度、河野さんに。河野さんはどんな人を求めているのか、伺いました。
「さっき明美さんが『雰囲気をつくる』と言っていましたが、僕もこれが一番大事だと思っています。確かに、品質とか味とかもすごく大事だからこだわっているんですが、それに勝る人柄。
やっぱりここに陸前高田の人たちがきて、ゆっくりしていける場所になればいいなと思っているんです。そういう意味では、人に喜んでもらったり、自らの人間的な器が広がっていくという成長を感じられること、そういうことを楽しめたらお互いに幸せだなと思います」
お話を聞いていると、河野さんが頭の中に描いている町の光景が広がっていきます。
やぎさわカフェの目指す表現について、インタビューの中で、こんなお話もありました。
「やぎさわカフェ一本松店のロゴは大豆。大豆は、双葉がでる時に豆がふたつにわれて双葉になるんですよ。なので、仮設店舗である一本松店は、土から上がった状態を表現しています。
そこからはじめてその双葉が開いた状態を表すのが、今のやぎさわカフェ。次に新しいことを始めるときには、これに花が咲いて実がついていくという表現をする予定です。全部つながっている、そういうことを表現していけたらと思います」
これからも、地域の誇る老舗しょうゆ店として、まちの人々に楽しんでもらうため、八木澤商店の営みは続きます。
もし興味を持ったら、ぜひお店に足を運んでみてください。
やぎさわカフェが、まちの歴史と共に、この場所で育っていくことを感じていただけると思います。
(TEXT:山﨑風雅)