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特定非営利活動法人SET(セット、以下SET)は、東日本大震災をきっかけに任意団体として生まれ、2013年に法人化されました。「まちづくり・ひとづくり・社会づくり」をテーマに、民泊や学生向けのキャリア教育、社会人向けの研修、人が集まるコミュニティの場づくりを通して「まち・人・社会」のつながりをつくり続けています。
2023年5月には、団体として総務省の「ふるさとづくり大賞」を受賞しました。ふるさとづくり大賞とは「ふるさと」に心を寄せ、より良くしようと活動する団体や個人に贈られる賞です。SETのまちづくりへの情熱や想いが、豊かで活力のある社会づくりに貢献したとして評価されました。
今回の求人では、民泊事業を進める仲間を募集します。
民泊事業を担当する戸谷咲良(とやさくら)さんと吉原直矢(よしはらなおや)さん、そして市内在住の民泊受け入れ家庭の武藏裕子(むさしゆうこ)さんにお話を伺いました。
左から、戸谷さん、武藏さん、吉原さん
民泊には人と人の心が通じ合う感動の瞬間があり、民泊の仕事はその感動の瞬間を地域の人たちと一緒につくりあげていくこと。この民泊事業をこれからもっと盛り上げていく新しい力が、今必要なのだそうです。
コロナ禍での、受け入れゼロから再開へ
2016年に始まった陸前高田の民泊は年々参加者を増やし、2019年には4,000人以上を受け入れ、東北最大規模になりました。しかし、2020年度は新型コロナウイルスの流行により、受け入れがゼロに。その後、徐々に受け入れを再開し、2022年度には約400人を迎え入れることができました。2023年の秋は約900人の受け入れを行う予定です。
2022年に3年ぶりとなる民泊修学旅行の受け入れを行った
戸谷さん自身にも大学生時代に民泊経験があり「民泊の良さをもっと伝えたい!」と民泊事業を手伝い始め、大学卒業後、陸前高田に移住し民泊担当として働いています。
「卒業後の進路を迷っていた高校生が大学に行くと決めたとか、それぞれの人が受け入れ家庭のなかでいろんな気づきを得ていると感じます。滞在後も交流を続ける人や陸前高田に通う人、移住をする人など“その人らしい”暮らし方を民泊で見つけていきます。だからいろんな人たちに経験してほしいと思っています」と、戸谷さん。
吉原さんにもお話を伺いました。
「僕は大学を卒業してから、将来の選択肢があまりに多い中で自分がどう生きたいか分からず悩んでいました。そのタイミングで、友人に誘われてSETの学習プログラムに参加し、民泊を体験しました。何か地域に貢献したいと思って意気込んで来たのに、逆に生きるうえで大切な根本にあるものを教えてもらったんです。
陸前高田の人や自然が好きになって、移住しました。時代の変化は大きいけれども、人として変わらないものがここにはあります。民泊はこれからも必要とされるものだと思っています」
約20数人いるSETの職員、全員が移住者なのだそうです。民泊の仕事をすることで、人のため、まちのために活動する先輩と一緒に働き、力をつけていくことができるのではないでしょうか。
地域とともに。地域の協力がなくてはできない仕事
民泊は、来訪者を受け入れてくれる家庭がなければ成り立ちません。多いときには1度に100世帯以上の協力が必要になることも。そのため、各家庭を訪ねて話を聞き、普段から地域の人たちといい関係を築くことが大切な仕事でもあります。
2016年から受け入れをしている武藏さんはSETの事務局メンバーの頑張りをよく知り、その活動を支える応援団のような存在です。
「私は仕事をしながらでしたが、ほとんどの回で受け入れをしていました。うちに来てくれる子たちもすごく良い子で、本当に楽しいんです。ずっと受け入れを続けてきたのは、民泊っていいものだと思えたからかな。事務局の子たちがすごく頑張っているのを見て、応援してるんです。このまちには若いリーダー的存在が少ないんですよね。地元の若い子たちは、進学や就職で都会へ出て、あとは戻って来なくなっちゃう。だから、こういう若い子たちが頑張っていることで、まちが活性化しているなぁって感じています」
家族として迎え入れ「高田暮らし」を経験する
「一生懸命やっているから、応援するよ」という言葉のように、良い関係を地域のなかで築くことも大切です。
「人と人の心を通わせる経験」をつくるために
今回の求人で求める人材について戸谷さんに伺いました。
「民泊の仕事は、旅行会社や学校との連絡や、地域の家庭を訪問して、民泊の相談をすることが大切な仕事の1つです。受け入れるためには、みなさんの協力があってこそ。知識や経験もあると嬉しいですが、地域の方と楽しく話す “コミュニケーションの力” が大切かなと思います。あとは、修学旅行生が多い場合、受け入れ戸数がなかなか必要数まで集まらなくて大変なときもあるのですが、それでも諦めずに一緒に頑張ってくれる人だと、私は嬉しいですね。
実は私は、民泊に魅せられて、民泊を仕事にしたくて移住したんです。でも、そのタイミングにコロナの流行で受け入れができなくなって、すごく落ち込みました……。心が折れかけたとき、この地域の人たちに背中を押されたから頑張れました。
民泊の仕事をしていて、地域の方と中高生たちが笑顔で楽しそうにしている姿が見れたときは、本当にやっていて良かってと思うんです!いつも愛情を持って私たちを迎えてくださる方がたくさんいます。もし働くことや人生に迷っていたら、陸前高田に足を運んでもらいたいです。まずは一度、民泊を体験するのもいいかも!」
民泊で出会う感動の瞬間
仕事内容や移住後の暮らしの不安について吉原さんは、
「もちろん不安はあるかもしれません。でも、僕もそうですがSETは移住者ばかりです。民泊の仕事が少しでも気になったら、まずはその気持ちを僕たちに話してみてほしい。この地域で得られる気づきをいろんな人に体験してもらえたら嬉しいです。ここは住めば都ですよ!」
武藏さんは、人の話を楽しみながら“誠実に謙虚”に聞くことが大切だと話します。
「高齢者と若い子たち世代では考え方も違うし、いろんな価値観もあります。誠実に関わってくれる人なら地域の人たちも迎え入れたいと思っています。スキルとか経験は二の次で大丈夫ですよ。想像だけでは分かんないこともあるし!
『見知らぬ土地に来て不安があるかもしれないけれども、それを受け止めてくれる人たちがいるよ。あなたにできることを探しにいらっしゃい。あなたらしく生きてみましょうよ』って、これを読んだ人に伝えたいですね」
SETのメンバー
コロナ禍で一時期は落ち込んだ民泊事業を再度盛り上げるために、新しい力を必要としています。「陸前高田の民泊はとてもいいものだから!」この想いを一緒に広げる仲間になりませんか?ご応募をお待ちしております。
Text:板林 恵