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今回インタビューを行ったのは一般社団法人SAVE TAKATA(以下、SAVE TAKATA)に勤める山本健太さん。まちづくりや教育、音楽など多岐にわたる分野で活動を行っている方です。
インタビューを行ったのは、「栃ケ沢公園」。陸前高田市コミュニティーホールに隣接した青い芝生の広がる屋外に設置された東屋の中から、こちらを見かけると笑顔で手をふって、居場所を教えてくれました。
まずはじめは、山本さんがどうして陸前高田に移住することになったのか、そのなりゆきから。
初めに出会ったときと同じ、にこやかな表情のまま「まずは仕事の話から」と、話し始めてくれました。
山本さんが初めて陸前高田市に訪れたのは2007年。大学在学中に車で日本一周を目指して訪れたことがきっかけでした。一度訪れたことがあった陸前高田に深く関わりを持つようになったのは東日本大震災を受けて、ボランティアに訪れてからのことです。
「何か大きなインパクトを受けたから、陸前高田と関わりを持つようになったというわけではなくて。移住しようと決意した理由は、ボランティア活動のために陸前高田市に訪れて、復興に向かう上で、何かの作業で人手不足なことがあれば、自分が陸前高田に来ることで支援できることがあるのではないかと考えたことがひとつ。あとはこれからこのまちでは、まちを新しく作り変えていくような、全国的に見ても先進的な事例が生まれていくのではないかと考えて、その場や時間を自分も体感したいというのがもうひとつの理由です」
「陸前高田だからこそ身につけられるものがあるのではないか」という想いと陸前高田に対する「何か自分のできることがあれば」という想いを抱いて、陸前高田市への移住を決めた山本さん。
2012年2月に当時在籍していた会社を退職した後、就職先は決まっていないまま、同年4月に移住しました。
移住当初は、内陸側の隣町である一関市大東町の大工さんのお手伝いをして生活費を稼ぎ、同じ時期に移住をした友人と一関市大東町にアパートを借りてルームシェアをしながら、陸前高田市に通う生活を送っていた山本さん。陸前高田市では仮設住宅で暮らす地域の方々の交流を深める場をつくるサロン活動を行っていました。
「サロン活動をしていると、自然とNPOに携わっている人たちと出会うことが多くありました。それがきっかけで、2013年の1月からはNPO法人陸前高田まちづくり協働センターの職員として働くことが決まったんです。震災で店舗を失った事業者の方々のサポートとして仮設商店街の事務局をしながら、市民活動の中間支援を担当していました。そうしているうちに、自分自身の根が陸前高田市に下りていくような感覚がありましたね」
活動をしていくうちに、地域の方との繋がりを広げていた山本さん。まちづくり協働センターの職員を4年間務めた後、2017年の1月からSAVE TAKATAの職員となりました。
SAVE TAKATAで山本さんが担当しているのは、子どもたちの教育に関わる事業。教育に関心のある地域の方々を中心に、学校や教育委員会と連携しながら、市内中学校で行われる「総合的な学習の時間」や「課外活動」のプログラムを考える仕事をしています。
「活動のテーマは『子どもと陸前高田の可能性を広げる』。まちの魅力を知るプログラムを通して、子どもたち自身が様々な能力を発見することで、子どもと陸前高田の可能性が広がっていくことを目標としています。学校や先生方が抱える悩みや課題を起点に、SAVE TAKATAが様々な学びの機会を提供し、子どもたちに起こしたい変化をお手伝いするような形です。そこで生きてくるのが、私がこれまでにやってきたこと。様々な活動を通して得た経験や人との繋がり、これまで陸前高田に来てから学ばせてもらったことを、子どもたちに伝えることができているんです。積み重ねてきたものが還元できる点でも、仕事にやりがいを感じています」
ここまでお聞きしたのは山本さんの「仕事」の話。「仕事とはまた別の活動もしている」という山本さんは自身の「趣味」に関連した活動も展開しています。
「趣味の部分でいうと音楽です。中学校2年生のときからずっと吹奏楽に関わっていて、打楽器をやっていました。陸前高田市に来る時には音楽はできないんだろうなと思っていたんですけど、地元の方と話をしていると音楽に関わっていたことのある方ってたくさんいて。『バンドがやりたい』とか『吹奏楽をやりたい』っていう話を聞いていたんですね。でも、みなさん自分から誰かに声をかけて、チームを組んだり、場をつくることは苦手だ、と。『誰かが声をかけてくれたらやるんだけどね』という話を聞いて、じゃあ僕がそういう場を作りますということで、市民吹奏楽団を立ち上げたり、音楽イベントを企画しています」
山本さんが企画した音楽イベント「私の音楽祭」はクラウドファンディングで開催資金を募り、 2017年6月に開催されました。市民吹奏楽団は小学生から80歳代の方まで、幅広い年齢の方が在籍しています。
音楽を通して地域のコミュニティーに参加することで「地域の方々のニーズがわかって、どうアプローチしたらいいかがわかった」という山本さん。
これだけ仕事や趣味のことで、積極的に活動をしながら、自身には「特別やりたいことがあるわけではないんです」と話します。
「誰かがやりたい!と思ったことに対して、一緒に考えて実行するのが好きなんだと思います。『やってみたいけど、なかなか踏み出せない』という時に、できない理由だけではなくて、どうやったら実現できるのかを一緒に考える。そうして『なんとかなるよ』って言ってあげるのが僕の役割だと思っています」
そうして、身の回りの「やりたいこと」を実現させていく。山本さんが目指しているのは夢や目標を持つ人達の「伴走者」になることです。
「沿道から『がんばれー』って言って、声援を送ったり、水を渡したりするだけじゃなくて、応援しながら、一緒に走ってるような状態。誰かがやりたいことを実現させるための、伴走者になりたい。そうしていることが僕もおもしろいなって感じるんです」
(Text : 宮本拓海(COKAGESTUDIO))