今の自分の姿はイメージしていなかった。選んだ道は、陸前高田での農業!

2024.02.20

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陸前高田市の復興のため、産業創出を目指してスタートした「ピーカンナッツによる地方創生プロジェクト」。

今回は、このプロジェクトの現場管理・農業担当として活動する、宮川大輔さんにお話しを伺いました。

いろんな経験が学びとなり、成長する

長野県中野市の出身で、高校を卒業後は地元のアイスクリーム屋さんで5年勤務していた宮川さん。その後、叔父の紹介がきっかけで、現在のピーカンナッツプロジェクトに参加します。

当時、陸前高田市と株式会社サロンドロワイヤル、東京大学の三者が協働してスタートしましたが、ピーカンナッツをつくる農家さんがいませんでした。そこでこのプロジェクトに繋がりのあった叔父から誘われて、宮川さんは二つ返事で参加を決意します。

「実家がりんご農家だったので、農業に携わることに特に抵抗はなかったですね。実家では、草刈りやりんごの収穫など、お手伝い程度でしかやっていなかったので、農業について本格的に勉強をしたのは、陸前高田に来てからでした」

2018年4月から、地域おこし協力隊として陸前高田市で活動を始めます。1年目は、市役所の農林課にお世話になりながら、お米やりんご農家さんのところで学び、イベント出店に参加して売り方のノウハウを教わりました。

農家の方や地域の人たちとの関わりが多い1年を過ごし、陸前高田での生活の土台が作れたと話す宮川さん。今でも変わらず付き合いが続いているそうです。

2年目となる2019年に、地域おこし協力隊は継続しつつ市役所は一旦出て、ゴールデンピーカン株式会社に所属します。勤務した1年間は、ピーカンナッツの販売と営業、宣伝活動に注力しました。

「ピーカンナッツが盛んに生産されている、アメリカアリゾナ州の農場へ合計半年間、研修に行くこともできました。夏場の管理の仕方やどのように成長をするのかなどを勉強する機会となりましたね」

現地で習得した知識や経験を得た後、2020年からピーカンナッツの試験栽培がスタートしました。再び、市役所の農林課へ戻り、初めてづくしの栽培のお仕事では、周りのサポートがとても心強かったそうです。

地域おこし協力隊の3年の任期を終えた後は、ピーマン農家として独立もしました。2023年からは、りんごの栽培もおこなっています。

「実際に農業をやってみて、知識がなくても誰でも始められると思いました。ただ、たくさん作って安く売るのが基本の農業なので、その“売ること”が一番大変で、難しいですね。」

ピーマンとりんご、そしてピーカンナッツの農家として経験を積み重ねている宮川さん。ピーマンの栽培では、地域の人の雇用をするまでになりました。

ピーカンナッツの農地も拡大し、市の農場3か所、サロンドロワイヤルの農場1か所。宮川農場と現在までで、合計約800本を植えることができました。

継続は人との繋がりなり

宮川さんのように、移住して農業を中心にして生計を立てている人は珍しいそうです。なぜ、ここまでぶれることなく農業一筋で頑張ってこられたのでしょうか。

宮川さんはこう話します。

「陸前高田と長野では、暮らしや環境は大きな変化はないですね。でも、高田に来て、農家仲間や移住者同士の繋がり、地元の人などの友だちが増えました。農業をしていて、分からない時には教えてもらい、困った時に助けてもらったり、人との繋がりがないとできないなと思います。やめずに仕事ができているのは、いい人がいっぱい居たからですね。そうじゃなきゃ帰っていると思います(笑)」

陸前高田での生活は、4月で丸6年になります。「親しくしてくれる人たちがいるから」「周りの人たちのおかげで」という気持ちが、宮川さんの仕事への原動力となっているのだと思いました。

そして現在は農業に加えて、2022年7月に陸前高田市にオープンした「サロンドロワイヤル タカタ本店」に籍をおいています。裏方の仕事や、サロンドロワイヤルと農家さんとの間に入り、やりとりや調整も行っています。まさに双方を繋ぐ、架け橋となる活動です。

「サロンドロワイヤルは、ピーカンナッツに関わる中でも、大切な存在だと思っています。できる限り関わっていきたいし、地域の人や観光客の人など、もっともっとたくさんの人に知ってもらって、実際に足を運んでもらえたらと思っています」

宮川さんは、サロンドロワイヤルのおかげで、「ピーカンナッツは美味しいもの」という認識が広まっていると感じているそうです。

農家の方からも、栽培したい!という声もいただくそうですが、今はまだ苗木を供給できる段階ではないと宮川さんは話します。

「今、頑張っているところです。これからも温かく見守っていていただけると嬉しいです」

人も仕事も誠実に向き合っていくこと

次に、今後の目標について伺いました。

「まずは、ピーカンナッツプロジェクトがうまくいくことです。このプロジェクトは、いろんな人が関わっています。自分の役割は、苗木をきちんと育てることなので、そのために日々勉強すること。栽培する場所によって使う肥料や農薬が違うため、陸前高田で育ったピーカンナッツのことを研究しつつ、きちんと収穫に繋がるように続けていくことが、目標ですね」

自分で選んだ農業の道。しっかりと仕事に向き合い、自分の役割や目標を明確にして取り組んでいる宮川さん。宮川さんが育てたピーカンナッツが、陸前高田の特産品の一つとして、これから全国へと広がっていくことでしょう。

最後に移住を考えている方へ一言、アドバイスをいただきました。

「ちゃんと自分の目で見て仕事をして、成果を出すことをすれば、陸前高田に住む人たちの信用に繋がります。関わる人を、そして人との繋がりを大切にすることで、困った時には誰かが助けてくれます。陸前高田はあったかい場所です」

Text:吉田ルミ子(一般社団法人トナリノ)

 

移住者プロフィール

宮川大輔さん

長野県中野市出身。高校を卒業後は、地元で就職。その後、叔父の紹介がきっかけで「ピーカンナッツによる地方創生プロジェクト」のファーマーに興味を持つ。プロジェクトに係る分野の地域おこし協力隊として、2018年4月から陸前高田市で3年間活動する。任期を終えた後は、ピーマン農家として独立、生計を立てながら、ピーカンナッツの現場管理・農業担当として活動をしている。農業だけでなく、サロンドロワイヤルにも籍をおき、裏方の業務やサロンドロワイヤルと農家さんとの架け橋も担っている。

インタビュー場所について

サロンドロワイヤル タカタ店

世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で“世界の優れたショコラティエ100選”に選出された、株式会社サロンドロワイヤル社の販売店舗。「陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設」内で店舗と加工場を併設しています。県内外から多くのお客様が訪れる場所は、ピーカンナッツ産業を通じ、陸前高田に新たな息吹吹き込んでいます。

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