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東京から地方へ。キャリアの選択肢を大きく変えたきっかけ
前職では大手企業の社員として9年間勤務。
店舗運営から建築設備、サステナビリティ推進室、マーケティング部門まで幅広い部署を経験した。
特にサステナビリティ推進室では、プラスチック削減やCO₂削減などの環境施策に取り組み、途中2年間は他団体へ出向。
海ごみを減らすプロジェクトに携わり、瀬戸内地域の職員とともに活動した。
「瀬戸内地域での暮らしは転機になりました。
香川で暮らし、地域の方とご一緒働く日々はとても心地よく、『こういう暮らし方もあるんだ』と知りました。
東京に戻ってからも、地域で暮らしたい気持ちは消えませんでした」
その後、前職の先輩に誘われて陸前高田を視察。
「未曾有の地震で悲惨な経験をしながらも、人に優しく明るく過ごす日々を積み重ねている方々に感銘を受け、
当時は手探りの中で何とかしなければという思いで本当に大変だったのだろうと感じました。」
こういった人々のたくましい姿に触れ、「自分の人生をちゃんと生きよう」という気持ちが自然と沸いたという。
ちょうど市が「脱炭素先行地域」に選定されたこともあり、これまでの経験を生かせる場として地域おこし協力隊に加わった。
田舎暮らしで感じた惹かれたこと
移住してまず感じたのは「時間の流れ」の違いだという。
「東京では仕事中心でカリカリしていましたが、こちらでは心穏やかに過ごせています。
自然の四季や稲の成長、当たり前のことなんですが朝の爽やかさや夜の暗さ、
そういう些細なところに癒されており都会では得られなかった“ゆとり”がここにはあると感じます。」
また、趣味ではクラフトビールを楽しんでおり、暮らしに彩りが増している。

着任4か月。積み木を積み上げるような仕事
着任前に抱いていたイメージと実際の活動にギャップはあったのだろうか。
「事前に伺っていた業務内容とそんなに差がなかったことや、周りの皆さんも優しいことで安心感が逆にありました。」
協力隊に着任して4か月。事業は壁にぶつかることも多いが、矢萩さんの表情は明るい。
「やることがたくさんあるのは幸せなこと。
前職では社内調整に追われて意義を感じにくいこともありましたが、
今は積み木を組み立てているような感覚でやりがいがあります。
崩れてもやり直せばいいし、積み上げる過程そのものを楽しめています。」
「全国に広がる規模感」から「一歩ずつ積み重ねる感覚」へ。働き方の質が大きく変化した。

地域とつながり、役に立つ存在へ
「地域の会合に、少しずつ顔を出せるようになりました。
そこで微力ながらも『役に立ちたい』という気持ちが湧いてきました。」
きっかけは、10月に開催される「横田あゆの里まつり」。
地域住民が集まり、準備段階から手作りで進めていく様子に触れ、
「こうやって地域の行事は形づくられていくんだ」と実感したという。
お祭りの当日は撮影を担当する。
役割を任されたことも、彼女にとっては参加できているという手触り感につながっているように見えた。
「今後は森や海など自然に関わる活動にも挑戦したい。
ほのぼのとした、自然を残すことにつながることをしてみたいですね」
人付き合いが得意ではないと語る一方で、
「自然と関わる」ことを通じて地域に貢献していきたいと話すその目は、静かに輝いていた。

編集後記
大手企業でキャリアを積んできた矢萩さんが、地域に飛び込んで得たのは「穏やかな時間」と「積み重ねる手応え」。陸前高田という新しい舞台で、「ちゃんと生きる」というシンプルな思いを胸に、今後の暮らしづくりや活動のお話を聞けるのが楽しみです。
(文・地域おこし協力隊サポートチーム)