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2011年7月に設立されたNPO法人パクト。東日本大震災後、陸前高田市へのボランティアの受け入れを行っていた災害ボランティアセンターの有志が中心となり、市民から寄せられる細かなニーズに応えたいという想いから設立された団体です。パクトは「陸前高田市復興サポートステーション」、「子ども支援事業」、簡易宿泊所「二又復興交流センター」の3事業を主に運営しています。
今回募集するのは、子ども支援事業の一環として行われている「みちくさハウス」の運営に携わるスタッフです。
みちくさハウスは2017年7月に古民家を改修して設立された施設。
東日本大震災で受けた被害により、子どもらしく過ごすことのできる遊び場や居場所がなくなってしまったことを受け、陸前高田で暮らす子ども達がのびのびと過ごせる場をつくることを目的としてオープンしました。
まずお話をお聞きしたのは、2013年からこの事業に携わってきた古野 安寿子さん。古野さんがパクトに関わるまでのなりゆきや、みちくさハウスで行っていることについて伺いました。
「私が陸前高田市に来たのは2011年の8月。当時は海外の途上国支援や災害支援を行っているNGOに在籍していました。その所属先のスタッフに陸前高田市出身の方がいたこともあって、陸前高田市への支援を団体として行おうということになり、私も現地入りし、当初はボランティアのコーデイネートを担当していました。子ども支援事業の担当を務めたのは2012年からです。もともとそれまで子どもに関わる仕事は経験がなかったので、最初は手探りで仕事を行っていました。2013年に、それまで勤めていた団体の事業が区切りを迎え、陸前高田市から撤退することが決まり、それまで担当していた子ども支援の活動をパクトが引き継ぐのと同じタイミングで、私自身もパクトに入職しました。子どもに関わる事業に継続して携わる中で、その仕事の奥深さに学ぶことも多く、今も日々やりがいを感じながら仕事に取り組んでいます」
パクトの設立当時は、「みちくさルーム」という名称で、仮設住宅の集会所や市内各地に設置されているコミュニティーセンターを会場として、大学生のボランティアと協力しながら、「子どもが子どもらしく過ごせるような場づくり」を行っていました。2017年7月に「みちくさハウス」がオープンしてからは、それまで巡回で行っていた事業を一ヶ所に集約し、拠点を持って続けています。
みちくさハウスで取り組んでいる「子どもが子どもらしく過ごせるような場作り」というのは具体的にどのようなことをしているのでしょう。
「例えば、今日は『みんなでカレーを一緒に作って食べよう』というミニ企画を開催する予定です。子どもたちが、みんなでご飯を作って食卓を囲む楽しさを感じながら、少しでも調理スキルを身につけられれば、それが子ども達の「生きる力」を育むことに繋がるのでは、という思いで企画されたものです。普段は、持ってきた宿題をやるとか、ボードゲームを友達同士でやるとか、一緒に外で虫取りしたり、鬼ごっこをしたり、日常的な遊びをして過ごしています。子どもたちが来るのは平日の放課後と学校がお休みの土曜日、日曜日。スタッフは指導員でもなければ、先生でもありません。子どもの目線に立ちながら、大人として子どもの安全を見守る。子どもに寄り添って、子どもがやりたいことをサポートするような立場です。子どものいない時間は、広報資料を作ったり、ボランティア受け入れのための準備をしたり、事務作業や活動の打ち合わせなどをしています」
インタビューを行った日は、集まった子どもたちとパクトのスタッフでカレーを一緒に作って食べるミニ企画が行われていました。みちくさハウスの畑で育てられた野菜を収穫して、カレーづくりの準備が始まります
もうひとり、お話をお聞きした熊谷 蘭子さん。熊谷さんがパクトに携わるようになったのは、2018年4月から。古野さんに誘われたことが働き始めたきっかけだと言う、熊谷さんにもみちくさハウスで働いてみての感想をお聞きしました。
「自分の娘と遊ぶために出かけた先で、たまたま古野さんとお会いして。お話しているうちに『今仕事を探している人はいないかな?』と聞かれて『私がいます。はいはいはい』みたいな(笑)。娘と過ごしながら、陸前高田市では子どもの遊び場が少ないことを実感していたこともあって、子ども支援事業は重要だから、やってみようと思ったのがきっかけです。私も今までこういう仕事はしたことがなかったのですが、他の方たちが優しく教えてくれるのでがんばれています。」
古野さん、熊谷さんを含め、パクトで働くスタッフは現在3名。みちくさハウスでは、スタッフ毎に明確な役割分担がされているわけではないと熊谷さんは言います。
「古野さんはまとめ役というか、子どもたちに声をかけて「これやるよー」って声をかけたり。私は畑にでて、野菜やハーブを育てて、子どもたちと一緒に収穫したり。もうひとりのスタッフは子ども向けの装飾や通信を作ってくれたり。それぞれの得意分野を活かすためにふわっとした役割はありますが、基本的にはみんなで仕事に取り組んでいます」
子どもと接する仕事から事務作業まで、すべての業務をスタッフ全員で補いながら取り組んでいます。最後に、今回の求人で募集するスタッフにはどんなことが求められるのでしょう。
「自分の個性を持ちながら、子どもの個性を尊重できる人。あとは人と接することが好きな人は向いているのかなと思います。この仕事はトライアンドエラーの繰り返しで。むしろ『自分はこれでいい』と現状に満足してしまったら良くないと思うんです。『自分は子どものことをよくわかっている』みたいな感じになると、ちょっと違う気がする。常に自分と子どもの関係を真剣に考えて、子どもと接していけるような人がいいのかなと思います」
と古野さん。すると熊谷さんも続けて話します。
「私は、子どもと一緒に笑いあえる人がいいのかなと思います。親だったら『やめなさい、どうしてこんなことをするの!』って言っちゃいそうなところを、一緒になって笑ってやってくれる人。そこが親と私達との役割の違いだと思うので。子どもたちがここなら、一緒に楽しく遊べる人がいるって思ってくれるような場所になるといいのかなと思っています」
パクトが目指している「子どもたちそれぞれが、その子らしくいられるような」場づくり。
それは働くスタッフひとりひとりが、親でも、先生でも、友達でもない、子どもとの関係性を築くために、日々試行錯誤を繰り返すことで、実現されてきました。
この記事を読んで、みちくさハウスでの子どもとの関わり方や働き方に興味を持った方は、ぜひ求人内容の詳細もご覧ください。
(Text : 宮本拓海(COKAGESTUDIO))