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JR陸前高田駅から車で15分ほどの場所に生まれた新しい施設「陸前高田 発酵パーク CAMOCY(以下、カモシー)」。オープンして間もないながらも、県内外からも注目を集める「醸す」がテーマの施設です。この場所で、新しいチャレンジをしようとしているロッツ株式会社の、名古屋茜さんと、池田捺美さんにチョコレートの甘い香りが漂う作業場でお話を伺いました。
ーー色々な機材が並ぶ、作業場。お菓子を作る場所、というよりは、理科室のような…名古屋さん、まずはロッツ株式会社のこと教えてください。
名古屋さん「ロッツは東日本大震災がきっかけで陸前高田で調剤薬局を始めました。『せっかく助かった命』を大事に、これからも健康に過ごしてもらうことを会社の理念としています。日本で初めての単独型訪問リハビリテーションや、リハビリテーション特化型デイサービスとフィットネスジムの一体化事業を展開していて、陸前高田のみなさんの健康に役立つことを目指している会社です」
ーーなるほど、健康に貢献することを大切にしている会社なのですね。でも、健康とチョコレート…どういうつながりがあるのでしょう。
名古屋さん「今まで、私たちの会社は医療や介護を中心にしていました。ですが、健康維持と健康向上の観点から言うと、ほんとうは保険適用の事業だけでは不十分なんです。
適度な運動や、ストレスからの解放も必要ですし、そして一番重要なのは食べる物からしっかりと栄養を摂取すること。ですが、栄養価の高い食品って、それほど多く世の中にはないんですよ。スタッフとそんな話をする中で、思いがけず知ったのがスーパーフードでもあるカカオの存在です」
ーーカカオがスーパーフード!知りませんでした。
名古屋さん「はい、カカオに含まれる成分で抗酸化値の高い『カカオポリフェノール』の存在はよく知られていますが、それ以外にも、血管に対してストレッチ効果のある『テオブロミン』という栄養素を含んでいます。生活習慣病予防に高い効果が期待されているんです」
ーーチョコレートは好きなのでよく食べますが、そんな効果があったとは…。
池田さん「ですが、一般的なチョコレートには、加工の過程でどうしても健康を阻害してしまう物質が入ってしまっています。そこで、私たちはオーガニックカカオと黒糖のみでチョコレートを作りたいと考えました。美味しくて、健康になる、元気でいられる。
これまでの医療・介護事業とは畑違いに見えるチョコレート製造ですが、発酵と健康という軸から、チョコレートを通じて美味しい健康習慣を提案できる、ロッツらしい事業だとスタッフみんなで取り組んでいるんです」
ーー施設と、お店のことも教えてください。
名古屋さん「はい、私たちのお店の名前は「カカオブローマ」と言います。店舗を構えている商業施設・カモシーは、麹を発酵させて、酒や醤油をつくることを指す「醸す(かもす)」に由来しています。カモシーの場所は震災で大部分が流されてしまいましたが、以前は味噌や醤油、麹まで含めると、8軒もの醸造業があった地域で・・・」
池田さん「発酵がテーマなので、クラフトビールやパンの店も入りますが、実は私たちが作るチョコレートも発酵食品なんですよ。カモシー内にはアトリエと呼ばれるシェアキッチンが備わっていて、予約制でチョコレート製造を体験することができるんです」
チョコレートが発酵食品だなんて驚きですが、昔からの「醸す」ことを大切にしていた場所にできた施設がカモシーなんですね。
ーそもそも、チョコレートってどんなふうにできるのでしょうか。板になっている状態しかイメージできないのですが…
池田さん「カカオは剥いてから砕くことができないんです。一度砕き、カカオチョコレートを作る工程は、カカオ豆に穴が空いていたりかけていたりするのを拾い分ける「選別」の作業からはじまります」
ーーこの段階ではまだまだ、チョコレートになりそうな気配は感じられませんね。
池田さん「その後、ロースト、皮むきを経てカカオニブを作り、それを黒糖と合わせ72時間混ぜ合わせ、出来上がるのがカカオマスです。さらにそれを熟成させ、テンパリングの工程を経て、型へ流し込み、チョコレートが完成します」
名古屋さん「市販のチョコレートには、カカオバター・植物油や食品添加物などが入っていることが多いですが、カカオブローマのチョコレートは、インド産のオーガニックカカオ、自然農法で栽培された沖縄の黒糖のみを使っています。カカオ本来の味と優れた栄養をお客様にお届けできるよう、スタッフみんなで一生懸命作っています。目指しているのは、“ファンシー”でも“ゴージャス”でもない、“美味しくて正直な”チョコレートです」
名古屋さん「美味しく正直なチョコレートを作る、ということを通して大切にしたいことが二つあるんです」
名古屋さんが続けます。
「ひとつは障害者の方に働く喜びを知ってもらい、正当な対価を払うこと。チョコレートは製造の工程がたくさんあり、障害を持つ方々も取り組める作業もあります。カカオブローマに携わっていただくことが自立の一助となったらと考えています。
もうひとつは、オーガニックカカオの生産者に対しても所得向上に貢献していくということ。カカオを収穫する現場には児童労働など今も根深い問題がたくさんあります。遠く離れた陸前高田の地からも生産者を支えていくために、ロッツはフェアトレードな取引を進めています」
チョコレートを作ることだけを目指しているわけではなく、オーガニックカカオがたくさんの人に受け入れられることが関わる人の経済的な自立に繋がっていく未来を実現させようとしているんですね。
ーー被災地の地元での雇用創出と、カカオ生産者とのフェアトレード。両立させるには、原材料にこだわりつつも、商品の企画力も欠かせません。池田さん、商品企画について、もっと教えてください。
池田さん「陸前高田や岩手県内には、チョコレートと相性の良い食材が揃っています。地元で採れるお茶「気仙茶」をはじめ、岩手オリジナルのヨーグルト、ゆず、リンゴ、はちみつ、トマト、イチゴ、くるみ、みそ、日本酒、ビール、ワインとチョコレートを組み合わせ、カカオブローマにしかない商品を企画したいと思っています」
ー今回はどんなお仕事をする方を募集するのでしょう?
名古屋さん「カカオブローマで携わる仕事は本当に多岐にわたりますが、今回募集したいのは製造・販売を担当する方。製菓に関する免許は必要ありませんが、おかし作りが好きな方は楽しんでお仕事ができる職場だと思いますね。あとは、科学的、実験的なことが好きな方にもぜひ興味を持っていただけたら嬉しいです。
年齢、性別はとくに問いませんが、目の前の課題を一緒に乗り越えていける人だと嬉しいですね」
池田さん「販売の仕事だけをしていると、お客さんからの質問に答えられないことも多いんですが、製造の仕事にも並行して関わることで知識が増えますし、自信を持って接客することができますよ。
完全にオーガニックなので、食への意識の高い方、ナチュラルな食に興味がある方には合う職場だと思いますね。あとは、企画やアイデアが思い浮かんだら「やってみようか!」と、とりあえずやる文化はありますね、いろんなことを試すのが好きな方と一緒にお仕事をしてみたいです」
ーー自分の想いが仕事の中に通りやすいというのは働く上で大事ですよね。
名古屋さん「今販売している7種類のチョコレートも、スタッフであれこれ話して考えたものなんです。
こうやったら美味しいかも?って考えた物が、多くの人に届く商品になる可能性があるのはすごいことですよね」
ーお仕事で大変なところってどんなところですか?
池田さん「チョコレート製造はマニュアル通りにやってもうまくいかないことがたくさんあって。気温や湿度との兼ね合いもありますし、一生懸命やっていたのに最後のところでうまくいかないとがっかりしてしまうことはあります」
ーやりがいを感じる瞬間はどんなときでしょう?
名古屋さん「薬局に勤めていたときも、患者さんから頂く『ありがとう』が励みになっていました。カカオブローマでもお客様と接して直接声を聞けることはやりがいを感じます。ECサイトでの販売も予定しているので、私たちがここで作った商品が世界中に届くかも、と思うのもワクワクしますね」
チョコレートを通してさまざまなことにチャレンジできる環境。
美味しいを探し、正直に、丁寧に向き合った仕事が、世界に繋がっていく場所で働くことができる、カカオブローマ。
これからたくさんの人が訪れ陸前高田のキープレイスになっていく場所で、自分の力を生かしてみませんか?