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東日本大震災から10年。壊滅的な被害を受けた陸前高田市のまちの復興をハード面から支え続けている企業があります。陸前高田市米崎町に本社を置く「株式会社 丸常工業」です。河川工事や造成工事、舗装工事などの土木事業を手がけ、また最近は建築事業にも力を入れています。創業は昭和51年で、震災以前から陸前高田市や周辺地域で事業を行う、この地域には、なくてはならない地元の企業です。
今回の求人では土木施工管理事業に関わる技術者を募集します。「半端な気持ちで陸前高田を復興させることはできないと考えて、これまで仕事に取り組んできました。」と語る代表取締役 金野常彦(こんのつねひこ)さんに、これまでの主な施工実績や仕事にかける想いを伺いました。
「奇跡の一本松の基礎工事も当社で行いました。一本松の写真を撮るときのことも考えて、見た目が綺麗になるように、その枝葉の向きもしっかり計算しましたね。本当はもっと枝があったけど、時間が経つにつれて折れたりして、形が変わってきています。『うちで作ったんだよ』なんて東京の親戚に言ったら、東京で自慢しようって言ってくれましたね。」
「もともと完成していた防潮堤の表面はコンクリートだったけど、より景観を美しくしたいという要望があって、斜面を芝生に張り替えました。高田松原の周辺の土地の整備に関しては、震災後から8年以上ずっと続いていますね。」
陸前高田市には、高田松原の海岸沿いおよそ全長2キロを超える広大な土地に、市を象徴する多くの設備があります。2021年、震災後初の海びらきが行われた「高田松原海水浴場」、復興のシンボルである「奇跡の一本松」、野球場・サッカー場・公園を備えた「高田松原運動公園」、震災前から変わらずにある「古川沼」などです。
丸常工業では、高田松原海水浴場の防潮堤やその駐車場、着替え室、シャワー室、奇跡の一本松の基礎工事、高田松原運動公園全般やその歩道の整備、古川沼に架かる橋の手すり、護岸工事、景観緑化などさまざまな施工を行なってきました。震災により、まちの施設がほぼ被災した陸前高田市。市の復興を象徴する施設を数多く手がけて、復興をハード面から支え続けている企業だということが施工事例から、よく分かります。
また金野社長には、これからの時代をつくる若い世代に土木や建築に携わってもらい、土木や建築に興味のある方にはできるだけバックアップしたいという考えがあるそうです。
「たとえば、土木建設業に興味があるけど、資格がないという人には、会社で経費を持って資格を取らせています。現状も通学している人が1人いますね。本人のやる気があって管理者になりたいという思いがあれば会社でその時間と経費を支援したいと考えています。まずは、とにかく相談してもらえたらと思いますね。
時代の変化に合わせて、これからは土木だけではなく、建築の方にも力を入れていこうかなと考えていて、去年は公民館を実績として作りました。これからは、土木と同時に建築も進めて二刀流でやっていきたいと思っています。」
作業や業種に応じた様々な資格があることから、まずは興味を持ってもらうことを大事にして、お互いに相談し合いながら、必要な職種の勉強をスタートしてもいいという体制は、これから土木や建築に携わりたいという人にとってはとてもありがたいものです。金野社長は続けます。
「会社の作業に準じた作業・業種のスキルアップをしたい人の資格や免許の種類は色々ありますから。資格取得のバックアップをすることで、今後は、働く人も管理者になりたい人も育てていきたいし、だからこそこの会社で長く勤めてもらえると嬉しいですね。若い技術者たちは常務と一緒に作業するようになって欲しいなと思っているんですよ。俺も歳なので、そろそろ引退の年だから。できるだけそういう環境を作ってやりたいとは思っています。」
金野社長のお人柄が分かる言葉です。金野社長は仕事以外にも、地元の公民館長を務めており、2020年までは陸前高田市建設業協会の副会長を10年以上務めるなど、多くの地域貢献活動もされてきました。陸前高田市で毎年秋に開催され多くの人で賑わう「産業まつり」にも、協力をしてきました。
「産業まつりでは陸前高田市建設業協会として、子どもたちが集まって楽しんで、土木や建設に興味を持つ企画をしたいなと思いました。クレーンに子どもたちを乗せて高いところまで上げて喜ばせたり、なんてことを毎年やっていましたね。ちょっと高いところから餅まきしたり。私が公民館長をしている公民館には地域のお祭りの写真を壁に貼り出したり。まちや地域を盛り上げていきたいという想いはありますね。」
「そういう意味では会社の事業も社会貢献。移住して働くことに興味を持ったら、その人を援助したいですね。会社としてスキルのバックアップがある。そういうきっかけでもいいから、来てくれるといい。陸前高田に住んで、趣味で畑をやりたいという人がいれば、空いてる畑を探してあげてもいい。釣りに行ってもいいし。世話はいくらでもしてやるから、あとはこの会社で勤めるという誠意を持ってきてほしいね。」
次に取締役常務の金野英敏(こんのひでとし)さんにも伺いました。
「今、丸常工業の人員の半数が65歳以上になっています。若い世代の人たちにこの仕事に就いてもらって、若返りをしていかないと会社として成り立っていかないと思っています。入職された方には、1つのグループの職長として、作業員を引っ張っていってもらえれば。現場を引っ張ってくれる、リーダーシップがある人がいればありがたいですね。U Iターンして勤めてくれる人がいるのであれば、すごくやる気もある方なのかなと思えたりするので、期待しています。」
金野社長が「若い技術者たちは常務と一緒に作業するようになって欲しい」とお話しされていましたが、若い世代を引っ張る金野常務も一緒に働いてくれる方に期待を寄せます。
丸常工業では、新社屋を建設してから5年が経過したそうです。従業員用の住まいの支援として、アパートの借り上げや、事務所の2階には貸室もあります。震災後、遠方からの管理者を受け入れる体制がなく、困った経験をもとに、金野社長が起案・設計し、住居の整備を行なったそうです。
金野社長はその部屋を案内してくださいました。
リビングダイニングが1室、別室として寝室があります。ベランダからは広田湾が望めるという好立地です。外階段から入室することができ、プライベートとの区分けもされています。「電化製品もあるから、身一つでもいいね」と金野社長が微笑みます。丸常工業が本社を置く陸前高田市米崎町は、中心市街地まで車で5分というアクセスのいいところです。また、海も山もあり自然が豊富で住みやすい地域でもあります。
「『働くばっかりで、行事もなくて面白くない』ってならないようにとは考えているね。休みには釣りをしたり、バイクをやっている社員もいる。高田の暮らしでやりたいことがあれば、いくらでも人を紹介したり、ここにこんなのあるよって教えてあげることもできるよね。」と金野社長、金野常務がおっしゃっていました。
陸前高田市の復興を10年にわたってハード面から支えてきた株式会社丸常工業。これから一緒に働いてみたいという人には、丸常工業の社員としてこのまちの一員になってもらいたいと思います。陸前高田市にはずっと描いている「まちの復興」というまだ終わらない目標があります。復興するまちづくりの担い手を募集しています。
text:板林恵