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「ポジティブな過疎地を創る!」をミッションに掲げ、陸前高田市の移住定住促進の事業パートナーとして、総合的な支援業務をおこなう特定非営利活動法人 高田暮舎(以下、高田暮舎)。移住希望者や移住者からの相談対応、仕事や暮らしなど周辺環境の情報提供を行う窓口業務、移住定住ポータルサイト「高田暮らし」の運営、空き家バンク、移住者コミュニティの形成など、移住後のバックアップもさまざまな角度から見据えた支援を行っています。
陸前高田市から移住定住総合窓口業務として請け負っている公的な事業の他に、高田暮舎が自主事業として開設した「お家の未来相談窓口」。2020年7月に、空き家のなんでも屋としてスタートしました。
今回の求人では、お家の未来相談窓口で一緒に働く仲間を募集します。
加速する空き家問題のストッパーに。「空き家のなんでも屋」スタート
求人募集にあたり、高田暮舎副理事長の越戸浩貴さんにお話を伺いました。
高田暮舎副理事長の越戸浩貴さん
「2016年に陸前高田市で、新たに移住定住に関する事業を進めるとなり、高田暮舎で手をあげました。移住定住となると、人が住むところもポイントとなることから、空き家バンクの事業もくっつけて、委託としてまるっと受け始めたのが最初です」
空き家バンクは、「空き家の利用を希望する人」と「空き家を所有している人」のマッチングをサポート、賃貸と売買につなげる事業です。しかし、現状は賃貸売買以前の問題を抱える家がほとんどです。
「状態が悪い、相続問題、名義変更がされていない、遺品がたくさんある、管理がされていないなど……多くの問題を抱えています。そこに、賃貸売買をしませんか?の武器だけをもって望んでも無謀なんです。『誰に頼ったらいいのか分からない』という空き家に関する悩みに応えるために、お家の未来相談窓口を立ち上げました」。
今年度の相談件数は、70件。空き家バンク窓口からの問い合わせが多いそうです。空き家バンクでは扱えない領域をお家の未来相談窓口へ。様々な悩みを解決まで導くため、ワンストップで寄り添い伴走しています。全ての問題が解決され、新しく生まれ変わった家は、再び空き家バンクへとかえっていきます。このような循環の仕組みができたことで、お家に関する小さな困りごとでも相談でき、安心して頼れる存在となっているのです。
「状況にもよりますが、相続から一通りの業務をやるとなると、2~3年はかかります。時間や手間がかかるのは事実ですが、自分たちが伴走することによって、悩みも解決されて気持ちが楽になり、適切な形で進められますよ。というのが、自分たちの仕事かなと思いますね。」
それぞれ業者や相談先が違うので、お家の未来相談窓口は全てを一括で総合的に受けられるのがメリットです。
現場で汗を流す意味とは
働くスタッフの主な仕事内容は、空き家所有者との相談対応、物件調査、やるべき対策の提案と見積、現場調整、現場の実施、請求書と報告書の作成など。専門性は必要なく、働きながら知識や経験を積んでいくことができます。
また、家財整理や遺品整理で重いものを運んだり、くもの巣を掃いながら掃除をしたり、敷地の草刈りを行うなど、現場で体を使う作業も多いです。
「その人の人生にふれる仕事だと思っています。人が住まなくなり、残された家は元気がなくなっていき、そこをどうするかが自分たちの仕事なんですよね。この事業を始めるときから大事にしていることは、『自分たちで現場をやる』ということです。現場ありきの仕事なので、自分たちで入ってなんぼだと思っています」
現在、市内で800件弱の空き家があるそうです。いかに自分ごとと考えてもらえるかが重要だと越戸さんは話します。
「空き家と聞いて、ネガティブで限定的なイメージになっていると思うんです。でも私たちの場合は、誰かの大事な人生をかたちづくってきたものとして捉えて、それに向き合うという気持ちで取り組んでいます。使えるものを使える形にして、資源としてマッチングしていくことが移住定住や物件の利活用に繋がってくると思っています」
越戸さんはどんなところにやりがいを感じているのでしょうか。
「所有者さんから、お家のことや今までのストーリー、ここはこうやって使っていたんだ。とか。そういうのを聞ける、話せること自体がこの仕事をしていないと経験できないことだなと思います。一つの物件の一通りの作業が終わると、物件の表情が変わるんですよね。次の人を受け入れられる状態になっている。次のステップに進んでいるなと感じることができるのも、やりがいの一つです」
一連の作業が終わり、新しく生まれ変わったお家
付加価値をつけて、新しい道へ
お家のことは長くかかると話す、越戸さん。一度コンタクトをとっているお客さまを常にメンテナンスし続け、必要な時にまた別のサービスを提案できるように、コミュニケーションを継続的にとることを意識しているそうです。
次に、求める人物像について聞いてみました。
「いかに粘り強くできるか。それと、家も家財整理をして集まった物も、全て人のものなので、それを大事にできるかが重要だと思っています。誰かがずっと使っていた空間や物に意味を感じられる人が向いていると思いますね。」
家財整理などで集まった、家具や食器、洋服、子どものおもちゃなど、思い出の家財たちは、陸前高田市竹駒町にある、泊まれる古本屋「山猫堂」で販売しています。お家の未来相談窓口の他に、古物販売や家財の引き取りを行う「miraiリユース」とワークショップや交流会の開催も自主事業で行っています。
miraiリユースの事業内で「不要になった家財のみで空間をつくる」というコンセプトのもと、山猫堂が運営されています。
泊まれる古本屋「山猫堂」
「CDや本などのソフトな部分は仕入れてやっていますが、その他の家具や雑貨などは全て空き家で不要になったものです。この仕事をやっていて、その物にたい積している時間の経過は、古さやぼろさではなく、本当の価値なのだと実感できるようになりました。それをこれから外に向けて、自分たちのフィルターを通して、付加価値をつけてやっていくことが使命かなと感じています」
家具や雑貨、古着など、全て空き家整理で不要になった思い出の家財たちを、山猫堂で販売しています
山猫堂では、焚火会、読書会、演劇、ワークショップなど、様々なイベントも開催されています。地域の人や県内外から訪れる人も多く、人との交流が生まれる場所でもあります。
「お仕事としては、お家の未来相談窓口の業務がメインとなりますが、山猫堂の運営の部分にも一部関わってもらいます。ただ、草刈りや家財整理、家の掃除などの地道な仕事が、山猫堂の運営に繋がっているんだということを理解して、楽しさを感じて柔軟に取り組んでくれたらいいなと思います」
毎月開催されている、読書会の様子
その人の日常に、安心と安全を与えてくれる、居心地のいい快適な場所である家。住む人とともに年を重ねて、人生の歴史を一緒に築いてきました。
住む人がいなくなり光を失った空き家を、自分たちの手で蘇らせる。一つのカタチにとらわれず、それぞれの家がもつ悩みに向き合い、寄り添っていきたい。そう心が動いたという方!ぜひ一緒に、お家の未来相談窓口で新たなやりがいを見つけてみませんか?
Text:吉田 ルミ子