地域活性化は「人と人が繋がって、新しい流れをつくること」

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これまでこの「移住者に聞く」でお話をお聞きしてきた方たちの職業は、地域おこし協力隊やNPO法人、一般社団法人のスタッフ、自らお店を開業された方や漁師の方など、様々。その職業の数だけ、陸前高田市では多種多様な活動が行われています。これまでのインタビューでは、その人それぞれが陸前高田市での役割を見つけ、生き生きと暮らし、働いている様子が感じられました。

 

今回インタビューをした萩原 威之さんも、自分に合った活動を通して、陸前高田市でいきいきと暮らし、働いている人のひとりです。

様々な仕事や活動に携わる中でも、特徴的なのがつぼ焼き芋屋「おいもの日」を営んでいること。
陸前高田市の地域活性化に携わりたいとの想いから、「つぼ焼き野郎のたけ」として市内でつぼ焼き芋を販売しています。

インタビューでは、萩原さんが陸前高田市に移住したきっかけと、地域活性化しようとする想いが「つぼ焼き芋屋」に結びつくまでの経緯や萩原さんにとっての「地域活性化」について、お聞きしました。

 

自分の大好きな場所がなくならないように

萩原さんは東京都練馬区出身。東京で生まれ、東京で育ってきた萩原さんが地方を意識するようになったのは大学を卒業後、都内の企業に勤め始めて5年が経った頃のことです。

「東京への人とお金の一極集中が面白くないなと思い始めたことがきっかけです。もちろん自分は東京で生まれ育ってきたので、その恩恵を一番に受けてきているのですが、東京はずっと住むところではないなと感じていました。暮らしたいと思うのは、自分の好きな自然が豊かなところ。そこで、地方が衰退している現状を耳にしていたこともあって、まちづくりや地方活性化に携わる仕事について、地方での暮らしを始めたいと考えました」

 

萩原さんの趣味はアウトドアやスノーボード。自然と触れ合うことが好きな萩原さんにとって「地方」は特別な場所でした。その「自分の大好きな場所がなくならないように手助けがしたい」と考え始めた萩原さんは、想いを実現するために、スノーボードをするためによく通っていた新潟県に移ることを決意し、新潟県内の市役所に入庁しました。

「まちづくりといえば『公務員』というイメージがあったのですが、働き始めてから自分の考えていた仕事とのギャップを感じて。広義的に捉えれば、市役所での仕事はもちろんどれもまちづくりに携わることなんですが、間接的にではなく、直接的に地方活性化に繋がる活動に関わりたいという想いが強くなっていました。それからプライベートの時間を使って、他の地域で、まちづくりの活動に携わり始めたんです。そうしたら、その方が地域おこしやまちづくりをしている実感がでてきて。『公務員ではなくてもまちづくりに携われるな』と退職することを決めて、次に自分が暮らす場所を探し始めました」

萩原さんが移住先の候補としたのは、陸前高田市、岐阜県高山市、新潟県三条市、福島県二本松士の4市町村。それぞれ約2週間ずつ移住前のお試し滞在をしながら、陸前高田市への移住を決意しました。

「もともと東京への一極集中がおもしろくなくて、地方に行きたいと思ったので、その状況と一番正反対の場所を、と考えたら陸前高田市だったんです。まちづくりや地域活性化に携わるやりがいや伸びしろが一番あるまちだと感じました」

萩原さんは2017年12月に陸前高田市に移住。移住と同時に、お試し滞在していた期間に知り合った人から紹介を受けた広田小学校の学童に指導員として勤務。つぼ焼き芋屋「おいもの日」としての活動も、移住してすぐ取り組みました。

「もともと食べることが好きで、自分も何か地域の味になるような料理をつくれないかなと考えた時にたまたま雑誌で見つけたのがつぼ焼き芋でした。実際に掲載されていたお店に食べにいったらとてもおいしくて。大きい設備の必要がないことなど、お店を始めるための敷居が低いこともあって、つぼ焼き芋屋を開こうと決めました」

クラウドファンディングで開業資金を募り、移住した2ヶ月後の2018年1月からつぼやき芋屋「おいもの日」を開店。中心市街地にあるまちなか広場や市内で開かれるイベント等に出店しています。

「テレビや雑誌で紹介されているおいしいものってやっぱり都会にしかないイメージがあるんですよね。でも、おいしいものが陸前高田市で食べられたら、地元の人も嬉しいじゃないですか。『うちにもこんなにおいしいのがあるぞ』って。そういうふうに喜んでもらえるといいですね。さらに、地方に新しい味を生み出して、その地域の味として残していきたいなと思っています。きっと東日本大震災をきっかけになくなってしまった、地域の味があると思うんです。なので、これから新しく生み出したものを残していきたいなと思っています。今、つぼ焼き芋を食べている子どもたちが大人になった時に食べて懐かしんでくれるようになることが目標ですね」

 

実現したいのは「人と人が繋がって、新しい流れをつくること」

まちづくりや地域活性化に携わることを求めて萩原さんが辿り着いた「つぼ焼き芋屋」。

萩原さんにとってのまちづくり、地域活性化は「人と人が繋がって、新しい流れをつくること」だと言います。

「そこに住んでいる人が、このまちに住んでよかったなとか、生まれてよかったなという満足度を上げることができたらと思っています。つぼ焼き芋のように新しくできたものによって、人の流れができて、たくさんの人が喜んでくれたら嬉しいです。自分のしている活動が、子どもから大人までたくさんの人に広がっていく、地域が活性化するための元気の源になれたらなと思います」

 

学童の指導員とつぼ焼き芋屋を営む萩原さんは他にも、スノーボードのインストラクターや広田町の太鼓のグループに所属して活動しています。

それぞれ活動の分野は異なるものの目指しているのは「人と人が繋がって新しい流れをつくる」こと。これからさらに新しく始めようと考えているプロジェクトもあります。

「陸前高田市内に、自然に親しんでもらう環境を整えたいなと思っています。作る場所は広田半島の真ん中にある大森山。林業分野で活動する地域おこし協力隊の方たちと協力しながら、今は杉の木が囲って機能していない展望台を復活させたり、アスレチックやツリーハウスをつくったりして、地元の人も地域外の人も集まれるような場所をつくりたいなと思っています。イメージだけはできているんですけど、まだそこまで行く道が繋がっていなくて。歩みは遅いんですけど、少しずつ実現できるように輪が広がってきているので、カタチにできたらと思っています」

萩原さんの構想に共感してくれた地元の方から「うちの山なら自由に使っていいよ」と声をかけられたり、「その活動手伝うよ」と市外の方が活動に参加してくれたり。現在は、週1回程度での活動を開始しています。2月は下草や倒木などの撤去、3月はアスレチック作りがスタートしました。

 

陸前高田市に、自然と触れ合える環境をつくる。その壮大なプロジェクトが実現するのにはきっと長い期間が必要なはず。それでも萩原さんは「陸前高田市にはこれからもずっと住むつもりです」、と強い意志を持って望んでいます。

こうした萩原さんの様々な活動を通して、陸前高田市が活性化していくための「元気の源」は、これからもまち中に広がっていきます。

(text:宮本拓海(COKAGESTUDIO))

移住者プロフィール

萩原 威之さん

東京都練馬区出身。大学を卒業後、都内の企業に就職した後、地域活性化・まちづくり分野への関心から、新潟県内の市役所に入庁。その後、2017年12月に陸前高田市に移住。現在は、広田小学校の学童に指導員として従事しながら、つぼやき芋屋「おいもの日」を運営している。

インタビュー場所について

お話を聞いた場所:
本文でご紹介した仕事や活動の他に、狩猟にも取り組んでいる萩原さん。お話を聞いた広田町の自宅付近の山は、萩原さんが初めて鹿を捕獲した場所です。「地元の人達からは『捕獲してほしい』と言われているんだけど、かわいそうだという想いが自分にはあって。あの時、抵抗している鹿の顔が忘れられないんです」。

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