「もっといきいきできるように、支える役割を担いたい」

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この「高田暮らし」を運営している特定非営利活動法人高田暮舎が目指す「ポジティブな過疎地」。

過疎地だからこそ、そこで暮らす一人ひとりが活躍できる可能性がある。
これまでの「移住者に聞く」インタビューでお聞きした方々の陸前高田市での暮らしぶりを振り返ると、その構想が少しずつ実現され始めている雰囲気が感じられてきました。

 

「自分が思いもよらない方向から、機会が与えられて、『やっていいんだ』と活動を始めることができる。もちろん自分がやりたくてやっているという感覚を持ちながら、地域の人たちに『必要とされる』感覚を持っています」

 

そう、話すのは、今回お話をお聞きした松本 玄太さん。

松本さんは、一般社団法人SAVETAKATA(以下、SAVE TAKATA)の理事や陸前高田市の名産品「米崎りんご」の生産や販売、担い手の創出を目指して活動するNPO法人LAMP(以下、LAMP)の代表理事を務めるほか、ゴスペルを中心としたピアニストとして音楽活動にも従事。

松本さんも「ポジティブな過疎地」で、自らの役割を見出し、活動されている方のひとりです。

 

インタビューでは、松本さんが陸前高田市に移住してくるまでと移住してきたあとのお話。さらに、そうして「地域の人たちに『必要とされる』感覚」を持って、様々な活動に取り組む想いを伺いました。

 

陸前高田市に移住するまで

松本さんが陸前高田市と接点を持ったのは、東日本大震災の起きた2011年3月のこと。当時、松本さんは東京に在住していました。

クリスチャンである松本さんが通っていた教会に、陸前高田市出身の方がいたことから、その方の親戚や知人の支援をしようと、2011年4月に初めて、陸前高田市へ。その後も、1ヶ月に1度は陸前高田市に訪れ、支援活動に携わると次第に、移住することを考えるようになりました。

 

「もともと東京を離れて、地元に帰ろうと考えていた時期だったんです。陸前高田市に通ううちに、景色が地元に似ていることもあって、まずは1回、こっちに住んでみるのもいいかもなと、陸前高田市に移住することを決意しました」

 

2012年4月に陸前高田市に移住した松本さん。移住当初は、SAVETAKATAと関わりを持って事業や活動に携わったり、個人活動として仮設住宅の支援などを実施。その後、2013年4月にSAVETAKATAに正式に入職しました。

 

「陸前高田に根付いた暮らしをするために、地元の人たちと関わる機会や、一緒に働くことが必要だなと考えて、SAVETAKATAのスタッフとして活動に参画することを決意しました。はじめは、物産展などのイベント企画や、企業の中間支援をするような仕事をしていましたね」

 

現在はSAVETAKATAで理事を務める松本さん。SAVETAKATAから分社し設立したLAMPには立ち上げから携わっています。

 

「LAMPとしての活動は、SAVETAKATAが2013年9月から米崎りんごの加工・販売をする事業を始めたのがきっかけです。活動を続けながら、そもそも問題になっているのは、『売れない』ことよりも、作り手がいないことや、そもそも『米崎りんご』が知られていないことだなとわかって。米崎りんごの『ブランディング』や担い手育成をする、LAMPを立ち上げました」

 

LAMPは、「米崎りんごに関わる仕事と人を増やし、米崎りんごを後世につなぐ」をビジョンとして活動している団体。米崎りんごの生産や販売、担い手創出に取り組んでいます。

 

「LAMPでは、主に経営を担当しています。これから増えていく担い手やりんごの生産者が本当にとことんりんごづくりに向き合って生活をしていけるように、サポートできるような役割を自分ができたらいいのかなと思っています」

 

松本さんと音楽。「前に立つ人を支えていきたい」

 

SAVETAKATAの活動やLAMPの活動に加えて、松本さんを語る上で、外せないのは「音楽」の話。松本さんはゴスペルの教室を月2回、開催しているほか、ピアニストとしての活動も行っています。

 

「音楽は自分にとってのアイデンティティ。5歳からピアノをやっているので、音楽が一番自分の中で積み重ねているものだなと感じています。なので、自分がこれまで経験してきたことの中で、地域に活かせるものがあるとしたら、音楽が一番だなと思っていますね」

 

「音楽ができないと、きっと仕事もできなくなる」というほど音楽好きの松本さん。音楽といっても、多種多様なジャンルがある中で、「ゴスペル」を続けているのは、その音楽性が「前に出る性格ではない」という松本さんと一致しているからだと言います。

 

「自分をだすよりは、歌う人のことを思って。歌う人が気持ちよく歌えるように意識しています。自分はピアニストとして、ソロで活動するよりも、誰かのバックで弾くほうが好きなんですよね。自分は何においてもみなさんの足の裏だと思っている。支えるのは弱っちい足かもしれないけど、前に立つ人を支えていきたい」

 

周りの人がいきいきとできるように。それはりんご農家を支えるLAMPの活動にも通じている考え方です。

 

「地元でずっと頑張ってきている人、そういう人たちがいたから、今ここで暮らせていたり、こういう活動ができているなと感じています。だからこそ、その地元で頑張っている人たちこそスポットライトが当たるべきだと思っています。自分が前に出るよりも、ここでもともと頑張っていた地元の人がもっといきいきできるように、支える役割を担えたらいいですね」

 

前に出るのは自分ではない。頑張っている地元の人達がいきいきできるように、支えたい。松本さんは率先して、その役割を担っています。

もちろん、そうしていきいきと暮らすことは松本さん自身が果たしたいことでもあります。

 

「市外の方たちが、陸前高田市で暮らしている人と出会って、『陸前高田にこういう人がいるんだ』、『こんなに楽しそうな暮らしをしているんだ』、『こんなにいきいきとしているんだ』ってなると、きっと『陸前高田市に行ってみようかな』と考える人が増えると思うんです。だから『いきいきと暮らせるか』は僕自身の目標でもある。そういう生き方を、周りの人に見てもらいたいですね」

移住者プロフィール

松本玄太(まつもと げんた)さん

広島県出身。東日本大震災後の支援活動をきっかけに陸前高田市に訪れ始め、2012年4月に移住。一般社団法人SAVETAKATA理事やNPO法人LAMP代表を務める。また、月2回のゴスペル教室の指導や、ライブ・イベント等への出演、地元アーティストへの楽曲提供など音楽活動も行なっている。

インタビュー場所について

インタビューをした場所:朝日のあたる家

NPO法人福祉フォーラム・東北と社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団が岩手県陸前高田市に開設した「朝日のあたる家」。地域の方が気軽に集まることのできる「コミュニティーハウス」として運用されています。インタビューを行ったのは、グランドピアノのあるお部屋で。
ゴスペルを演奏したこともあるこの空間が、松本さんの思い入れが深い場所です。

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