「自分の手の届くところを頑張れば、ちゃんと認めてもらえる。『ここにいていいんだよ』って」

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「前までは引っ込み思案だったんです。でも今はちっちゃいところに挑戦していく。同じことを繰り返すんじゃなくて、少しずつ挑戦していく姿勢をとろうとしてきた感じです」。

と話すのは「一般社団法人SAVETAKATA(以下、SAVE TAKATA)」に所属する大武唯さん。SAVETAKATAは「農業」「IT事業」「若者事業」を軸に地域の課題を継続的に解決する社会事業会社。大武さんはそこでWEBデザイナーを務めています。

「引っ込み思案」だった大武さんが「ちっちゃいところに挑戦」しようと決意し、どんななりゆきで今ウェブデザイナーとして、陸前高田市で暮らしているのか。お話をお聞きしました。

 

評価されることが怖かった、創作活動


周りのもの音が聞こえてこないような室内で、こたつに入りながらゆったりとインタビュー。大武さんのほんわかとした空気感のまま、ひとつひとつの言葉がそっと丁寧に置かれていくような語り口でお話してくれました

 

大武さんは神奈川県川崎市出身。美術大学・大学院に入学し、洋画を専攻していました。大武さんがウェブやグラフィックデザインに関わりを持ったのは就職をしてから。むしろ学生時代は、デザインなどの創作活動に苦手意識を抱いていました。

「小さい頃から、絵とか工作は好きだったんですけど、美術系の大学に入ると、やっぱり周りに自分より上手い子がたくさんいたんです。どれだけやっても周りの子の方がうまかったり、褒められたりしてて。わたしって『何が好きなんだろう』ってよくわかんなくなってきちゃったんですよね。『どうせ褒められないし』って、餌を与えられず走ってる馬みたいな。『なんで走ってるんだろう』って感じはあって。努力をしてないと、責められるし、『生きていけなくて当然だよね』みたいな。社会が許してくれない感をずっと抱いていました」。

自分のしていることが肯定されない。大武さんは自分と周りの人とを比べながら、その劣等感から「ちっちゃく、ちっちゃく」内向的な性格になっていったと言います。

「評価されることが怖かったのかな。『なんで努力をしないんだ』みたいなことを言われるんだろうなと思って。やらないこと、戦わないことへの後ろめたさがずっとあった。その戦いが壮大なものしかないと思ってた。世界的に有名にならなければいけないとか、大きい展示に出品しなければいけないとか。きっとそういう環境にいたほうがメキメキ成長するなって思うし、めちゃくちゃ経験も積めるんだろうなって思うんですけど、それに自分が耐えられるかって思ったら、無理だって思うし、また戦わなくちゃと思うと….」

 

大武さんが抱いていた「競争」をしている感覚は、「なんでつくっているんだろう」と創作活動への意欲低下に影響を与えていきました。

そんな意識を変えるきっかけになったのは、大学院生時にインターンシップをしていたデザイン会社が開催していたワークショップでのことです。


大武さんがインターン生としてお手伝いしていた「てにをはワークショップ」。大武さんは企画メンバーの中でも率先して活動に当たっていました

 

今目の前の人に喜んでもらえるように

「インターン生としてお手伝いしていたワークショップに、SAVETAKATA代表の佐々木信秋が参加していたんです。佐々木がインターン先の社長に『高田でウェブを制作したいんだけど、デザイナーがいないんですよね。誰かいませんか』と話をしていて。社長が『ここにいるよ』って私を紹介してくれたんです。そこで初めて佐々木と話をして。私が『デザインはやったこともないし、むしろ苦手意識を持っています』と言ったら、『勉強しながらでいいので、ちょっとやってみませんか』と声をかけてくれた。そう言われて、『難しそうだけど、ちょっとやってみようか』と思えたんです」。

それまで「自分は他人に認めてもらえない」と劣等感を抱いていた大武さん。自分を必要としてくれる佐々木さんとの出会いが足がかりとなって、陸前高田市でウェブデザイナーになることを決意しました。

「今できることを最大限にやろう!」という雰囲気がこの会社にはあるんです」と話す大武さん。働きやすさが、「つくること」への意欲の変化にも繋がっています。

 


SAVETAKATAのオフィス内。メンバー同士とても親しげな様子で、それぞれが作業に向いながらも、会話中には笑顔がこぼれます

 

「今は仕事として与えられることを頑張れば、周りの人から『がんばったね』って認めてもらえる感覚があります。自分の手の届くところから少しずつ頑張れば、認めてもらえるんです」。

これまで市内のクライアントを中心に、ウェブやジュースのラベル、ロゴなどを制作してきた大武さん。

大学時代の「競争」している感覚とは異なる感覚を陸前高田市での仕事や創作活動から得ていると言います。

「漠然と大きなものに立ち向かうのではなくて、『今目の前にいる人に喜んでもらえるように』って具体的で身近なところにゴールを設定して、そこに向かって頑張れているような感じです。ここでの仕事では、相手に『すごい素敵』って喜んでいただけていて。今はわりと前向きにお仕事、創作ができてるなと思います」。

 


みなさんが今見ている、この「高田暮らし」。ウェブデザインは大武さんが手がけています

 

「目の前の人の期待に応えたい」。そうしてつくったものを喜んでくれる人がいる。そうした今の状況に大武さんは仕事のやりがいを感じています。

「『ありがとう』とか『いいね』って言ってもらえているなっていうのが、人に認められている安心感に繋がっています。そうするとこっちもその相手が好きになってきて。この人たちのそばにずっといたいなーと思うんです。ぬくぬくしていたいなって」。

 

関わる人達から自分のことが認められている、そんな安心感を得ながら、その人々の喜ぶ顔を思い浮かべて、大武さんは今日もまた創作活動に励みます。

大武さんの「働く」
「デザインの輪を広げて、地域のあらゆる困りごとを解決する」- 一般社団法人 SAVE TAKATA

(Text : 宮本拓海(COKAGESTUDIO))

移住者プロフィール

大武唯さん

神奈川県川崎市出身。神奈川県の女子美術大学・大学院では洋画を専攻。卒業後、2016年4月に一般社団法人SAVETAKATAへ就職を機に陸前高田へ移住。職名はウェブデザイナー。この「高田暮らし」のウェブデザインの他、「米崎りんご ア・ラカルト」のロゴやリンゴジュースのラベルなども手がけている。

インタビュー場所について

インタビューをした場所:大武さんが住んでいるシェアハウス

写真は大武さんの部屋で。シェアハウスメイトとの交流の他にも、それぞれの友人がこの家を訪れることもあって、人との関わりがシェアハウスを機に増えることになったそう。「今までで出会うはずのなかった人との関わりがこの家に住んでからちょっとできるようになってきたなっていうのは嬉しいですね」と大武さんは話します。

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